帳簿・書類の電子保存(令和5年税制改正版)

概要 

帳簿・書類の電子保存とは、『会計ソフト等で作成』した総勘定元帳などの『帳簿』や 貸借対照表・損益計算書・売上請求書控 等の『書類』 を印刷せずに『データのまま保存』することです。

データ保存できるもののうち、総勘定元帳や仕訳帳などの『帳簿』は『優良な電子帳簿』と『その他の電子帳簿』の二種類に分類されます。

逆に貸借対照表や損益計算書、自社の売上請求書控などの『書類』には優良とその他の区別はありません。

『優良な電子帳簿』は要件を満たしたうえで税務署に届け出することで過少申告加算税の軽減措置が受けられます。

ただ軽減措置だけでは要件の厳しい『優良な電子帳簿』は中小企業の皆様が導入するメリットは正直いって少ないです。

印刷せずにペーパーレスにできることこそが最大のメリットですので『帳簿』については個人的に『その他の電子帳簿』の方が断然おススメできます。(*^^)v

そこでここでは『帳簿』については『その他の電子帳簿』の要件を簡潔に御紹介したいと思います。

※なお現時点で予定される令和5年税制改正までを踏まえた情報に基づいております。

電子保存の対象となる帳簿・書類

最初から会計ソフトなどで作成した以下の書類が対象となります。

  • 『帳簿』・・・・・会計ソフトなどで作成した総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳など

         (帳簿のみ『優良』と『その他』で要件が変わります)

  • 『書類』(決算関係)・・会計ソフトなどで作成した貸借対照表・損益計算書・棚卸表など
  • 『書類』(自社発行)・・販売管理ソフトやExcelなどで作成した売上請求書などの控

要件(帳簿はその他の電子帳簿)

  • 最初からすべて会計ソフトなどの電子で作成されている帳簿・書類であることが必要です。
  • 責任者・作業過程・順序・入力方法などを記載した『事務処理マニュアル』を作成・保管しておきます。  ※国税庁サンプル
  • 税務調査時には会計ソフトなどの操作説明書をすぐ出せるようにして保管しておきます。(電子マニュアルはアクセスできればOK) 
  • 税務調査時にはPCで素早く見やすい状態で画面表示または紙で印刷できるようにしておきます。
  • 税務調査時にはデータのダウンロードに応じることが必要です。(『帳簿』はCSV形式が必須)

 

 

※ 手書きの現金出納帳をもとにPCに入力した場合は最初から電子で作成したことにはなりません。

  手書きの出納帳自体を保管しておく必要があります。(出納帳のスキャナ保存はできません)

※ 記帳代行の依頼をしているような場合も認められますが年1回の作成代行は認められません。

  電子にかぎらず年度が終了してからまとめて記帳することは認められていないためです。

  またデータの保存場所はあくまで自社であり記帳代行先とすることは認められません。

※ 『帳簿』は検索しにくいPDFだけではダウンロードに応じることにはなりません。

  税務調査時には帳簿のCSVも併せて提供できる必要があります。

留意事項

  • 電子取引とは異なり導入するかどうかは任意です。
  • スタートするにあたって届け出は不要です。
  • 『帳簿』は原則として期首からの保存です。
  • 『書類』は年度の途中からでもスタートできます。
  • 『その他の電子帳簿』であれば一部の帳簿のみ電子で保存とすることも可能です。
  • Excelや販売管理ソフト等で作成した売上請求書や領収書を紙で郵送ではなくメール等で送付した場合は『電子取引』となり保存要件が変わります。  
  • Excelで作成した請求書を印刷して手書きで修正するような場合は、修正した請求書を紙で保存するか『スキャナ保存』する必要があります。ただ印刷後、会社印を押印して送付しただけの場合は押印のない電子のままで保存できます。
  • バックアップは要件ではないですが万が一に備えて随時しておくべきと考えられます。

まとめ

『帳簿・書類の電子保存』について実務面で特に重要と思われる点を列挙してみました。

PCで作成した請求書等を郵送ではなくメール等で送付することで『電子取引』に変化することは要注意です。(; ・`д・´)

この点は販売管理ソフトが『電子取引』の保存要件を満たせば特段なにもする必要はありません。  

(例.freeeの請求書作成システムで発行した請求書をメールで送付・Web共有した場合など)

逆にExcelで請求書を作成し、紙で郵送した場合はOKですがメールで送付した場合は要注意です。

『電子取引』の要件(真実性や検索性など)を満たすように自身で加工する必要があります。

注意すべき点はありますが全体的に見た場合、『帳簿(その他)・書類の電子保存』は『電子取引』や『スキャナ保存』より難易度が低く中小企業でも非常に取り組みやすいのではないかと思われます。

人手が少ない中小企業も会計ソフトで経理を行い、売上の請求書や領収書は販売管理ソフトやExcelで作成するようにすればすぐにでも取り組めると思われます。

ただ電子帳簿保存法に対応を明記している会計ソフトなどを使うのが一番無難かと思います。

また紙での郵送の場合、Web郵便等で行えば人手がなくとも手間が省けますのでおススメです。

仕事の息抜きに郵便局に投函にゆきたい場合にはおススメできませんが(笑)

デメリットとしては税務調査がデータで行われることになるため紙面では見つからなかったミスが簡単に見つかる可能性があることでしょうか。

今回の内容が少しでもお役に立てば幸いです。

※実際に運用するにあたっては必ず税理士や税務署等に御相談ください。