インボイス改正 令和5年税制改正大綱(令和5年1/20時点)

令和4年12月23日に「令和5年度税制改正の大綱」が発表され、インボイス制度につき見直しが行われる見込みとなりました。

思うようにインボイスの登録が進んでいないことや各方面からの批判の声に配慮したかのような負担軽減を意識した内容になっております。

ただ内容的には正直なところもう少し緩和してほしいと感じる内容にとどまりました。

ここでは財務省より発表されたQ&Aをみてどのような改正案になったかを検討していきたいと思います。

インボイス導入により課税事業者となる場合の経過措置(2割特例)

適格請求書発行事業者に登録(インボイス登録)しなければ課税事業者となることがなかった免税事業者はインボイス導入後一定期間は売上高の2割を納付すればよいこととなりました。

簡易課税であれば第2種の小売業などの場合と同じ計算方法になります。

簡易課税を選択している場合、主たる事業が第3種~第6種に該当するなら特例を選択した方が有利となると考えられます。

ポイント

 ①.インボイス登録をするにより課税事業者となった『免税事業者』であること

 ②.適用期間 → 令和5年10月1日から令和8年9月30日までの属する課税期間(最大4回分の申告)

 ③.申告書に2割特例を受ける旨を記載するだけでよく特別な手続きは不要

 ④.申告のたびに原則的な計算(本則or簡易)と2割特例の有利なほうを選択が可能

  ※ただし前々事業年度の課税売上が1千万を超える年度は原則的な計算のみ

 ・本則課税を選択している場合 →  本則or2割特例 を申告時に選択可能

 ・簡易課税を選択している場合 →  簡易or2割特例 を申告時に選択可能

『税込1万円未満』の課税仕入の要件緩和(少額特例)

中小企業の事務負担軽減のため『税込1万円未満』の課税仕入は帳簿に記帳するだけでインボイスがなくとも消費税を差し引くこと(仕入税額控除)が可能となりました。

ただし事業規模に制限があると同時に6年間の期間限定となっております。(´;ω;`)

対象事業者となる課税売上ギリギリのラインを推移しているような場合は適用するか注意が必要です。

ポイント

①前々事業年度の課税売上が1億円以下 または 前事業年度の前半6ヵ月の課税売上が5千万以下の事業者のみ適用可能

②上記①に該当する場合、帳簿記載だけで『税込1万円未満』の課税仕入は仕入税額控除できる。

③令和5年10月1日から令和11年9月30日までの6年間限定の措置

④1商品ごとの金額ではなく1回の取引で税込1万円未満かどうかを判定

『税込1万円未満』の値引きや振込料などのインボイス交付義務の免除

入金される際の値引き・返品・リベート・振込料などが『税込1万円未満』の場合、返還インボイスを交付する必要がなくなりました。

少額な値引きごとに返還インボイスを発行、振込料について金融機関のインボイスが必要になるなどの懸念がある程度は解消されたことになります。

こちらは少額特例と異なり事業規模・適用期間の制限もないものとなっています。

ポイント

①すべての事業者が対象

②適用期限はなく恒久的な措置

③『税込1万円未満の売上対価の返還等』(返品・値引き・リベート・振込料など)に限定

④入金時の振込手数料負担→会計上の科目はなんでもよいが課税区分は売上対価の返還で処理

                     普通預金   9,800  / 売掛金 10,000

  課税区分は売上対価の返還で処理 →  支払手数料   200  /

インボイス登録申請期限の緩和

制度開始と同時にインボイスの登録事業者となるには原則としてR5年3月31日までに申請する必要がありましたが、現段階での登録状況が芳しくないためかインボイス開始前日のR5年9月30日まで登録期限が緩和されることとなりました。

これにより、改正前はR5年4月以降に令和5年10月1日から登録を受けたい場合は申請書に『期限までの申請が困難な事情』を記載することが必要とされていましたが、今回の改正で記載不要で登録申請できることとなりました。

ただ申請から登録完了まで3~4週間はかかるため制度開始と同時に登録事業者になりたい場合は早めの申請が必要です。


個人的には少額特例と返還インボイスについては『税込3万円未満』を期待していましたがそこまで甘くなかったという感じです。

ただ今後も追加で緩和策が講じられる可能性がありますのでインボイスの情報には注意が必要です。

今回の内容が少しでもお役に立てば幸いです。

※実際に運用するにあたっては必ず税理士や税務署等に御相談ください。